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  • 2015.10.23 Friday
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文学フリーマーケット

出張を終え、成田から東京駅へ向かった。日中の都内は梅雨を控えた空気が内向的に湿っており、その証拠には私の前では板東英二がタクシーを待っていた。


アメリカ大使館からほど近いホテルオークラに到着すると、ロビーの素晴らしい空間構成に寺社を訪れた時のような荘厳さを覚えた。金色の壁面とこげ茶の木質柱とが高い天井からなるほのかな灯りを優しく吸い込んで、幾何学模様のちりばめられた意匠すらその奇抜をいっこう目立たせないほどにたいへん落ち着きのあるマンセル値を叩き出していた。私はここに二泊したけれども、まずこれ以上は望めまいという完璧の接客にたいへん癒され甘やかされ、ホテルオークラ似の妻を持ちたいと思った。


あくる日、雷門を観光した時のことだ。前の若い男が私に踵を蹴られて舌打ちを鳴らした。人海に揉まれる仲見世通りの混沌にあっては踵を蹴飛ばされるくらいは想定の内であるべきだが、見れば男は裸足に靴の踵を踏みつけながら歩いていた。ゆえにいっそう痛かったようである。だがそれからもう、私は前の男が気に入らない。見知らぬ人間に舌打ちという、その無礼な行為が気に入らない。混雑を靴の踵を踏んで歩くという、その軽率も気に入らない。何より混んでいることがいちばん気に入らない。


と、男が左折の様子で裏路地へ抜けにかかった。ほとんど茹で蛸同然になっていた私は、ここで逃げられたら苛つきをぶつける先を失うので、当然もう一度蹴るわけである。してみればあちらが私へ絡んでくるのも自明で、関西弁で罵りにきた。上背こそないが、運動をしていそうなふくらはぎで、何より威勢が良い。


「お前さっきからなに蹴っとんねん」
「この混雑で踵踏みながら歩いといて蹴られたも何もねぇだろ」
「お前なに蹴っとんねん」
「知らない人間に向かって舌打ちしてどんな意味かわかってんのか」
「お前こっち来いや、オラ、こっち来いや」
ここで、私は向こうの意図するより間近に進むと腕を伸ばして相手のうなじに右手をかけ、ぐいと引っ張った。利き腕の左で殴るも良し、明らかに相手よりも固い靴で金玉を蹴り上げるも良し、身体の血が沸騰するのを感じたが、過去は云うに及ばず最近になって再びUWFや新日のクラシック試合ばかり見ている私は、ここから先が藤原の頭突きや前田の膝や天龍の拳やそんなものばかり連想されて当たる気がしないのである。さすがに始まると思った第三者の仲裁によって不穏の空気を残しつつその場は収まったわけだが、あの時は相手が悪いと思っていたもののこうして文章にしてみるとほぼ自分が悪かったようである。


これだからやはり、文章は書き続けねばならない。











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