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  • 2015.10.23 Friday
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ぎゃくせつのまさし

 浮いた金が発生したので、ソファとベッドを部屋に置こうとインテリア製品を販売するウェブサイトを巡回していると、彼女から別れに関する内容のメールが飛んできた。


 それから二時間ほど、様々なサイトを巡回した後に目当てのローベッドとコーナーソファを発注した私は、扁桃腺の腫れに伴う高熱にうなされながらも、堅実な買い物が出来たことに深い充足感を覚えつつ床について高熱のまま朝を迎えた。朝には必ず鳴るはずの彼女からのメールがないだとか、そういう別離を偲ばせるいかなる要素も見つけられないままに、一晩を経て今に至る。付き合っている頃から、彼女は私の中に生きてはいなかったのだ。


 彼女は私の生活一切に対して、ひとつの干渉もしてこなかったし、是正の類いをぶつけてくることも滅多になかった。そういう意味ではまことありがたかったのだが、彼女もまた甘え方を知らぬ不器用な人であったため強請るということを知らず、挙句我々は月一度のセックス行為以外には何一つの恋人らしさを共有することなくこのたびを迎えてしまった。価値を認められなくなったからあちらも別れを切り出してきたのであろうし、私もこの関係にはもう価値が残っていない気がしていた。


 稀に彼女は私とディズニーランドへ行きたがったが、きほん出不精の私はあくまでも在宅を主張し、映画を観たがった。ならばと彼女はスターウォーズ全作を観たがったが、スターウォーズという名称から予期される群像劇の濃度を恐れて私は松本清張シリーズを観たがった。じゃあそれでいいよと頷かれると、まじで松本清張観るのかよと、私は映画そのものを拒否した。つまるところ私は彼女と娯楽を共有する気がなかったのである。彼女が出してくる提案の全てをへし折っているうち、私という存在を全否定するこの男はちょっとおかしいのじゃないかと、そんな考を深めたのであろう、たまに飯へ誘ってみれば、普段は全然連絡もよこさないくせに、いきなりご飯って、今日こうやって二人でご飯を食べることには何か意味があるのと、意味論を吹っかけてくるのであった。


「意味はあるさ、今日は仕事が早く終わって時間がある上に、俺もお前も腹が減っているのだから」
「そっか」


 ぜんたいこんな調子で過ごしていれば、この男にとって何が可で何が否であるのか、彼女として思い詰めるうち、どうやら面倒な男であると、そういう結論に辿り着いて然るべきで、そのようにして別れに至ったと私は踏んでいる。


--彼女に対する愛情が怪しくなったのは何時頃ですか?
「彼女がファミレスで『うまっ』という言葉を連呼した、ある晩ですね。これは後々気がついたのですがどうやら彼女の口癖で、飯を食い始める際に『うまっ』という言葉を非常にしばしば口にする。なんか、私はアレが生理的にダメでした」
--付き合ってからどれくらいのことですか?
「三日目ですね」


 まさしながら、彼女は善い人だったと思います。まさしながら。

 

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  • 2015.10.23 Friday
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コメント
雪姉ちゃんおいしいのん?
「ふぅん…」
  • 雪子
  • 2013/02/17 7:32 PM
雪子様

僕の思うに「うまっ」と云う人は同様に「くさっ」「きもっ」「さむっ」「ねむっ」「うざっ」など口癖にあって、小さなつで終わる語感を無意識に頻用するのだろうと分析しますが、そういう人が駄目らしいですね。語尾で手軽にライト感を演出しようとするその根性が、気に食わないらしいですね。言葉選びの妙にときめく恋は、ある。
  • 本人
  • 2013/02/21 10:48 PM
うふふふ
  • 雪子
  • 2013/03/01 11:33 PM
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