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  • 2015.10.23 Friday
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ロナウドメモリアルマッチ

 ロナウド引退については昨日書いた。現人神には最大の敬意と感謝の念を捧げよう。箪笥の奥から大学時分に購入したブラジル代表のユニフォームを引っ張りだした。2002年日韓W杯仕様、背には9、RONALDOの文字が眩い。これを着て、今日のフットサルの試合に臨み、なおかつロナウドを彷彿させるような動きだけに徹しよう。決意して、大敗した。


 フットサルコートに到着すると、ほかには4人しかいなかった。集まらなかったという。まずはスタメン勝ち取った。対して相手は十数人からなる大所帯で、女子すら観戦するような賑わいのあるチームだった。チームメイトの曰くに、勝てない相手だからせめて楽しもう。……私は、ふだんリーグ戦には参加していないため顔見知りの1人を除く3人とはまったく面識がなかったが、やる前から負けを考えるどすこい節に対して、声を張った。


「強者に対する戦い方はある。トップ1人だけを残したカウンターでいきましょう。人数を残しておけば狭いコートですから少なくともスペースは潰せます。フットサルならディフェンスからの切り替えの早ささえあれば十分試合になる。ところで、ロナウドが引退を発表しました。この試合はどうか、僕の敬愛するロナウドに捧げさせていただきたい。戦術はロナウドでお願いします」


一同(……なに言ってんだこいつ?)


 とはいえ私は本気だった。戦術はロナウド、ボビー・ロブソン監督がバルサ時代に残した名文句である。じゃあロナウドは誰なんだ、聞かれるまでもなく私しかいない。ニット帽に手袋、これもまた寒さに弱いロナウドおなじみのファッションだ。縦ポン一発お願いしますなどと言いながら続かないリフティングを披露していると、奇怪なことには血の気がみるみる引き、眼前が白くなっていった。柔軟、パス回し、リフティングと矢継ぎ早に身体を動かしたせいで、試合前から早くも私のスタミナはかなり削られてしまったのである。


(正直、本気のダッシュは前半のうち1回が限界だな……)


 ところで、ロナウドを具現化するためには必ず披露せねばならぬプレーがいくつかある。


・またぎフェイント
・キーパー抜き去り
・圧倒的な突進力でディフェンス2人の間を突破
・キーパーが対応できない絶妙の死角を正確無比なインステップゴロシュートで射抜く
・ゴール後の飛行機パフォーマンス
・ディフェンス放棄


 特に、またぎフェイントとキーパー抜き去りに関してはどれだけやってもやり過ぎはないロナウドの代名詞、徹底せねばならない。


 私は相手の油断も大きい開始直後に全力を賭けることにした。ちょうど、キーパーまでの直線に相手が1人と、ドリブルコースも空いていた。キックオフの笛が鳴り、仲間がちょこんと球をくれる。今だ!


 猛然とドリブルにかかる私。のらりくらりしてスペースだらけとなった相手中央左陣を切り裂きにかかる。「ロナウドだ!」笑いと共に沸き返る相手ベンチ、呆れる仲間、迫るディフェンダー。パスコースなんて探さない。伝家の宝刀『またぎフェイント』を繰り出す。


 <状況>●=敵 ○=味方 ◎=自分
         ――
        |  |
          ●
        ● 
        ↑   ●
        ↑ 
        ◎    ● 
    ●ーーーーーーーーーーー

         ○
         
      ○        ○


 猛然とまたぎフェイントにかかる私。のらりくらりしてスペースだらけとなった相手中央左陣営を切り裂きにかかる。「まさにロナウドだ!」更なる笑いと共に沸き返る相手ベンチ、いよいよ呆れる仲間。左足から始まって1回、2回、3回、4回、5回……!? バランスを決して崩さないディフェンダー。あれよと囲まれパスコースなんて探せない。
 

 <状況>
         ――
        |  |
          ●
        ● 
        ◎●  
       ● 
             
    ーーーーー●ーーーーー

         ○
         
      ○        ○


(このマーク……、イタリアW杯マラドーナの悲劇再びか!)


 団子になって球を奪われ、むしろ相手の素早いカウンターからダイレクトパスを繋がれ美しい失点を浴びた。考えてみればこの、とりあえず1人がドリブルで突っかかって、失敗したら残りがフォローという戦法、策としては下の下で、負けるために時間を潰す弱小スポーツ少年団でしか見たことがない。私は、今更ながらドリブルが通用しないらしいことに焦りを覚えた。こんなにロナウドが好きなのに、誰よりも愛しているのに、なんで!? フットサルしながら乙女の心になっていた。


(ドリブルしたら失敗する。しかしパスへの飛び出しでキーパーとの1対1、これもまたロナウドだ。そこをまたぎで左右に揺さぶって、転んだところを抜きされば良い。ノルマだって一気に3つくらいクリアできるじゃないか。肝心のデ・ラ・ペーニャはいるだろうか?)


 デ・ラ・ペーニャどころかパスをくれる味方すらいなくなった。こねくり回されて失点の連続。たまにボールを持つも、もはやドリブルにかかる余力もないといった有様で楔となったり、すべてを周囲に任せて拍手と声をかけるばかりの地蔵となるうち前半が終わった。あまりに疲労が辛すぎて、わけわからず相手のプレーにもナイス! などと拍手喝采を何度か送ってしまったほど細胞の死滅は進行していた。


友人「猫木、またぐのいいけどさ、左右に揺れてるのがお前だけじゃしょうがねえって」
猫木「……」
友人「どうした?」
猫木「……(つかれすぎて声が出ない)」
友人「……」


 後半が始まった。相変わらず相手のペースで、味方陣営に押し込まれる時間が長い。私は千載一遇を狙って相手の裏に空いた広大なスペースを徘徊していた。前半のプレイを見て、相手もマークを甘くしたようだ。と、味方の眼鏡選手が、わけわからず相手の強パスを野球盤の如く思い切りはじきとばすと、猛烈な勢いで私のほうに飛んできた。


<状況>
         ――
        |  |
          ●
         
           ◎      
         ●  ↑
            ↑ 
    ーーーーーーーーーー
             ↑
      ●  ○    ↑
             ●↑           
      ○ ●     ○

   
 この、ロングボールがぐんぐん迫ってくる数瞬、私はいろいろのことを考えた。後ろには敵がいる、どの体勢でトラップしようか? 半身の体勢で受けたい、だがそんな難しいこと出来るか? キーパーまでの距離を考えたら胸で落として反転、早いタイミングでシュートを打っても構わない、相手のディフェンスも遠からずにいる。ただ、本物のロナウドなら、絶対に足で受けてキーパーを抜きにかかるだろう……。


 よし、右足で受けて、ディフェンスに背を向ける形で反転、そのまま斜めに突っ込んで右→左とまたいで右足で角度の浅いほうへキーパーをかわして、右足で流し込もう。イメージが完成するのはまこと早かった。そうしていざロビングボールを右足で受けると、軸足の左がふいに激痛に見舞われ、私はその場へ足を抱えて倒れ込んだ。おお、ロナウド! 友人が寄ってきた。


「おい、演技だったらキレるぞ、まじでふざけんなよ」


 膝十字靭帯を痛めたシーンの再現と受け取ったようで、しかし実際は、つってしまったのである。こうして私のロナウドメモリアルマッチは終了し、結果は1-11の惨敗、ロナウドのシュートは0だった。ロナウドであり続けることの難しさを改めて思い知らされた。夢をありがとう。

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  • 2015.10.23 Friday
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  • 22:41
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コメント
ロナウド選手への愛情が伝わる文章でした。敵に囲まれた図が面白かったです。猫木さんはサッカーも好きなんですね、意外!
  • は・る
  • 2011/02/16 10:40 AM
は・る様

Jリーグチップを箱買いする友人にくっついて菓子をもらっていた小学校時代でした。辛い筋肉痛は発熱くらい体調を崩しますのでフットサルはあれを最後に永遠にやらないかもしれません。体力が落ちる一方、頭は未だまともに動く大人たちがスポーツで一日を楽しむためゴルフを選ぶのは、かなり理にかなっていると思いました。若い人達との本気のフットサルは、一人の成人が死ぬ可能性を孕んでいますから。
  • 本人
  • 2011/02/17 4:20 PM
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