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  • 2015.10.23 Friday
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ライト8番恩田誠三郎

「オーライオーライ!」


 草野球でもライト8番の恩田は、二子玉川グラウンドの土手沿いを犬と歩く美女にすっかり幻惑されていた。土手は小高く、グラウンドからその姿を眺める恩田は、傍目には崇高な思索に耽っているように見えるが、視線の先には美脚がある。パンチラを期待するにはやや角度に浅すぎるものの、ヒールの高い靴をはく女の脚には、見る分にはほどよい緊張感がみなぎっており、すらりとのびるその脚にはまた、毛穴の一つもないであろうこと、50メートルも離れた恩田にはしかしながら明白で、事実左手のグラブは股間を覆い、ボールを掴まねばならぬはずの狭い空間の中では、右手が陰茎を弄んでいる。


(舐めたい、舐めたいよ…。3万、3万でどうだ!?)


 美女は恩田に気づかぬが、犬が恩田を睨んでいる。刹那、金属バットの快音が恩田を現実に戻した。見れば猛烈な速力で空を駆け抜けるものがある。ライトフライか! 恩田は焦った。


「オーライオーライ!」


 美女への想いも拍車をかけて、恩田の大声は、澱んで重苦しい六月の空気を突き抜け、川向こうまで届いたかと思われるほどであった。と、ベンチに座るマネージャー達がクスクスと笑うのが恩田に聞こえた。笑い声の起こった方向に目を遣って恩田は、ベンチではなくその手前、一塁の様子に愕然とした。ファーストが、小学生のアキレス腱運動のような大袈裟な姿勢で、ベースを踏みつけつつボールを手中に収めていたのである。ライトフライはどうなったのだ? 上空を仰ぎ見て、恩田は尚叫んだ。


「カ、カモメじゃないか!」


 それからほどなくして恩田は草野球チームを脱退した。穴のあいたライト8番には順繰りに女マネージャーたちが入ることとなったが、勝率は下がるどころかむしろ上がっており、チームの雰囲気にしてもこれまで以上に親密となった。


 後日恩田は、土手沿いを散歩している最中に、相も変わらず草野球に興じるかつての仲間たちを、みくだすようにして眺めた。ライトに入る女の脚は、恩田のそれよりも太い。マネージャーの座るベンチには、産毛の生えた大根が八本並んでいる。


「ねえ貴方、よくこんな人たちと草野球やっていたわね」
「この土手、君のパンチラを拝むには角度が浅すぎたが、あいつらをみくだすにしてもやっぱり浅すぎるよ」


 恩田の隣には、犬と美女とが並んで歩いている。

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