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  • 2015.10.23 Friday
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友達の友達

「4時44分に校庭の真ん中に立っていると、足下から消えてしまうらしい」
「本当? 誰に聞いたの?」
「友達の友達」
「えっ、お前、友達いたっけ」
「そういうこと言うともうダブルドラゴンやらせてあげないからな!」
「いいよ、ケイタの家でNEO GEOやるから」
「ネオ、ジオ…?」


 友達の友達、便利な言葉だ。責任を負う必要もない。学生時代、よく聞いた。出自不明の情報は、必ずこの体裁をとって耳に届いた。事実を確かめようとするのが億劫になる絶妙の位置だと思う。友達を飛び越えて友達というのは、群像めいていて、考えても面倒臭い。


 都市伝説は友達の友達を通じて広がる、そんな風に説いた学者もあった。誰もが友達の友達から聞いたとするから、噂の出所は、あるはずなのに決してない。その匿名性が、かえって人々に不気味な印象を与える。


 多くの人の曲解、虚飾を経て、最後にはずいぶん珍妙な物語となることも、珍しくない。口裂け女に出会ったらポマードと唱えると逃げられるなど、いかにも子供じみた脈絡のなさを覚えるが、そのちぐはぐさが実は、恐怖を煽るようになっているから、都市伝説は侮れない。手術中、医師のポマードの悪臭にたまらず顔を背けた女性が、それを原因に口を裂いてしまったという因果を聞かされた時、やあこれは本当の話に違いない、そう思ったものだ。頭の悪い小学生などは、それらしい理屈さえあれば、信じてしまう。


 高校時代、エノキというあだ名のついた、教室きっての大ブスがいた。顔が悪いと性格も腐るの見本みたいな女で、空威張りに凄みのある奴だった。体型は鈍重で、そのくせスカートが短く、下着をつまびらかにすること再々に及び、見たくもないのに見てしまう男の性を逆手に「ちょっとあいつ今私のパンツ絶対見た」のごときを大声にて放言する、悪辣な不細工だった。


 或る放課後、男子五人と一人の女子が、お喋りに興じていた。


「今日エノキのパンツ見ちゃったよ」
「俺も見た、何か毛ェ透けてたよな」
「女の子の陰毛初めて見たけど、汚いね、エノキだからかな」
「ちょっと、一緒にしないでよ、私のは違うんだから」


 ゴクリ。


 男子は報われない童貞ばかりだが、一方の女子は鼻こそ上向いているものの、割と綺麗な顔立ちをしていた。何故彼女が見るからして不毛の軍団に割って入ったのかは覚えていない。ただ、五人のうち二人はすっかりその女子に心を奪われていたことは覚えている。いずれもが童貞で、彼らの後日に言うには、分け隔てない態度に優しさが溢れていた、清らかな精神に惚れた、というのだった。お喋りするだけで惚れてしまう童貞の底の浅さに閉口したし、それは童貞の純粋性というよりは、単なる無知に思えた。もちろん、そうやって人をたやすく信じてしまう純情の気質が童貞の値打ちであることは分かってはいる。そうかといって、その値打ちを認めてしまったら、女性はただ美しくさえあれば、眠たげな色気と博愛めいた薄愛をちらつかせることで底辺をうよつく男共を食い物に、その美が画期的である限りは楽して世を渡っていくことが出来る、ということをも認めねばならない。ヤリマンとかいう言葉で自分に見向きもしない女子を疎んじるのは他ならぬ童貞のはずだ。これでは童貞精神は食い物にされるだけだ。端正な美女なのに優しいという理屈で己の愛情をたやすく注ぐなどというのは、ただの多情ではないか。自分に優しくしてくれるから僕は君が好きだなどと言っていたらば好きになる女子の数はうなぎ上りの一途、結局付き合えるのなら誰でもいいというのが童貞の本質と指摘されても、非難のしようがない。それは平素において忌み嫌うヤリチンと大差ない。彼らは思った相手とのセックスに成功しているが、童貞は失敗している、それだけの差異でしかないからだ。だから、童貞に限って好きな人は10人いるかなみたいなばかなことを云う。それは結局、セックスに昇華出来ないことで愛情を消化出来ないと云っているに等しく、愛とはセックスを標榜しているヤリチンの論理と、寸分に違わない。なんだしょうもねえな、童貞。出来ないからって、僻むなよ。


 そのように高校男子らしく冷笑気味に童貞達の興奮を眺めていると、女子の口から驚愕の言葉が出た。


「××ちゃん、夏休みに処女捨てたらしいよ」
「本当か?」


 思わず声が大きくなった。童貞達は、慄然としている。セックスをいかに早く済ますか、というのは高校男子にとっては一つの大きな指標であるから、エノキよりも価値のない人間、という思いが彼らの胸を去来したのかもしれない。


「誰と、いつ、どこでよ?」
「それがさ、地元の友達の友達の先輩だってさ」


 女子は、含み笑いをおさえつつ、そう云った。


「絶対嘘だよ!」
「びびったー!」


 童貞達が、狂喜している。おれは、その話を聞いて、哀しくなった。きっと、セックスをしたという既成事実をでっちあげることで、一つ他の女子よりも抜け出たかったのだろう。もとより誰もエノキの言葉などに誰も耳を傾けてはいなかったのだが、周囲の冷淡の熾烈に、己の位置を今一度高みに運ぶべく、つい口から出た嘘であること、疑いようがない。地元の友達の友達の先輩、なんと遠い縁であろう。都市伝説以上に真偽を確かめようのない話だ。三親等すら知らないおれには壮大すぎてものも云えない。ここまで自傷的な嘘をつかざるをえないほどに虚栄に満ちたエノキ、あらゆるが自業自得で酌量の余地などまるでないが、彼女に宿るセンチメンタルは、おれの中にあるそれと、違わぬ物だと実感した。


 その翌日から、おれはエノキに優しくなった。もとより遠ざかっているだけで誹謗中傷の何を云うでもなかったが、たまに雑談をふってみるなどして、これまでよりも親身になった。威張らずとも平穏な学生生活だってあるのだということを、さりげなく教えてやりたかった。


 そうしたところ、後日になって、エノキがおれを熱愛しているという話をエノキの親友より直截に聞いた。都市伝説ではなかった。とんだばかやろうがいたものだ。以来おれは、調子に乗った不細工が好きではないし、構おうとも思わない。

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  • 2015.10.23 Friday
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コメント
大型フェリーの甲板は野球場がすっぽり入るくらい大きいんだぜ?と吹聴して回ってた幼少を思い出しました。残念ながら友達の友達から聞いた話ではなく、その3年前に実際に乗った記憶の記憶が物事を過大に捕らえさせておりました。
俺のじいちゃんに殴られると窓からふっとんで30mは飛ばされる。これもまた私の幼き頃の恥言です。

なぜでしょう?こんな苦い思い出ばかりが今、浮かんできました。
真咲様>
そういうのはたまにありますよね、僕のクラスメイトも、黒板大の犬が襲ってきたとかいう話をして皆にばかにされていました。きっと恐怖が対象を巨大化させたのでしょう、人の視覚など当てにならないものです。

真咲さんはもしや、虚言癖に苛まされている人であったりするのでしょうか、いや、良い意味で。そういう火のないところに煙を立たすことのできる鋭敏な感性というのは、好きな人にとっては愛らしく、そうでない人にとってはたいへんうざったいものなので、女性の前ではイケメンを汚さぬ程度に発揮するのが吉かと思われます。あの頃は、「静かにしていれば可愛いんだから黙っとけ」などと、木村拓哉も神田うのに言ったものです。
  • 本人
  • 2008/09/09 12:17 AM
虚言癖というよりも素直にそれを信じ込む純情少年と自己解析しております。言い換えればそう自己解析する以外に自らを慰める術が無いとも言えます。

その昔、ギャル3人組をナンパしてみたらば「黙ってたらいいのに」とかなりウザそうな目で見られた事があります。「それが俺じゃヴォケ」とつっぱねてカッコ良く去ったのは妄想の中の私であり、現実は「え、えー?そうなん?ほな喋るのやめとくーw」的渡世術であってように記憶しております。
真咲様>
自家発電的なセンチメンタルは永久駆動のハイパーダッシュモーターであり、その故僕らはいつだって子供みたいに切ない思いに浸っては、酒に浸り、だらしがないのです。そういった思い出はさっさと作品として纏めるべきです、全ては悲しみの果てにあると、松本人志や稲中も、教えてくれたではありませんか。

  • 本人
  • 2008/09/11 3:53 AM
東京都、31歳、ペンネームmorimoriunkoです。
友達の先輩の後輩(38歳)が鈴木清順(85歳)と結婚しました(極秘情報)。
そこで先生に質問があります。
85歳でもセックスは可能なんでしょうか。
勃起はするものなのでしょうか。
よろしくお願いします。

ところで日曜は暇ですか?
  • morimoriunko
  • 2008/09/12 9:33 AM
morimoriunko様>
それは、本当ですか?大事件じゃないですか!僕は以前、70歳でオナニーをする老婆がその後失恋にそそのかれるまま首を吊ったという話は聞いたことがあります。その年代ともなると男性はやはり勃起に非常の困難があるようで、挿入せずこすりつけあうようなセックスが浸透しているようです。なんともエロティックな話ではありませんか。

日曜は、ボクの誕生日に彼女が都合悪いということで、彼女にその自由を奪われることが濃厚です。それともなにか、僕の好奇を駆り立ててやまぬイベントがあるのでしょうか?
  • 本人
  • 2008/09/12 10:00 AM
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