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  • 2015.10.23 Friday
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床に落ちた食い物と別れた彼女には未練を残すな

 昨晩、潮騒のように轟く予感を胸に、男は動揺していた。


 ーーはて、俺の付き合っていた娘は、こんな色情魔であったか


 酒の進むほどに本音の湧出が止まらない女は、男に対して実にさまざまの本心を話した。とはいえ直截に物事を言い表すことはなく、それはたとえば次のように展開されたのである。


 貴方は出会いがないと言っているけれど、それはそういう場に出ていないだけのことじゃないかしら(私は飲み会に出まくっているから目下のところ出会いを一身に受けています)、私は例えば髪型一つにしろ、提案されないと満足出来ないの(あの頃の貴方は、私がたといどんな髪型をしても、良いも悪いも一度として言及してくれたことがなかったわ)、貴方は結局、趣味や知識の伸びる方向が同じでないと、人を人と認めることが出来ないのよ、私はそういう風には男性を選ばないけど(うわべで判断する貴方と違って、私は本質を見ています)。


 よくもまぁ、言ってくれたものである。偉くなってくれたものである。男は憤慨するよりむしろ、好まざる方向へと劇的な変貌を遂げた女に、失念を覚えたのであった。


 女はその後も、麻雀を覚えたいが、あいにく周りには遊びで麻雀をする男がいないから、その遊びとは縁がないことに不平を漏らしたりした。とはいえそれもまた、聞けばずいぶんとうすら色情狂った話で、どうも女の言うその男達というのは、賭け麻雀には精を出しているようである。つまり、ルールを教えるのは面倒だが、やり方さえ覚えればいつでも混ぜてやる、という男達との口約束が果たされているのである。ギャンブルの一切に嫌悪の感情を示していたかつての女は、一体何であったのだろう。


 更には、女は男の酒に弱い様子を眺めるなり、実に哀れな視線を投げ掛け、お酒が飲めない人って何が楽しいのか分からない、本当にかわいそう、なんだかこっちまで白けてくるし、絶対に一緒には飲みたくない、などと口走るのであった。男は、つっても新宿では朝まで飲むことも珍しくはないんだ、などと一応の反撃を試みるが、そんな量で朝までなんて、店にとっちゃ嫌な客だわね、そのような口調で一蹴されるのであった。


 その後も、折りに触れては新たな男の影をにおわし、隙を伺っては眼前の元彼氏批判に精を出す女の態度にさすがに嫌気の指した男は、諦めの口ぶりでこう総括したのであった。


「まあ、おれってのは人を否定出来ないから、個人というものを信じているから、尊厳を認めているから、君に対して一切の不平不満を漏らさなかったし、文句の一つも言わなかった。君からして、きっと何を考えているのか分からなかったんじゃないだろうか。しかしそれが俺なりの肯定だったわけだ。全てを許すこと、それ以上に出来ることって一体何があるだろう。しかもそれは言葉にはならないところの、一つの態度だ。だから、全身全霊をもって君を褒めようとしたところで、言葉の上では「オシャレだね」がせいぜいのところだ。で、君としてはこんな張り合いのない男はいないという結論に達したわけでござりましょうが」


「うんそうだね」


「せいぜい幸せになれ」


 恐ろしく冷たい寒風の吹きすさぶ昨晩に見た女、それはかつて男が愛でていたあらゆる美徳の腐敗した、一人のつまらぬ女であった。折しも男が放蕩に飽きた頃に、女は淫蕩に目覚めた。美しい花も枯れれば犬の糞まみれ、この世の春を謳歌せんとばかりに大股を広げる女の姿はラフレシア、小虫を集める腐臭の妖花、つまらぬ男をとっかえひっかえするたび、輪をかけてつまらぬ女へとメタモルフォーゼを繰り返してゆく。女もまたそのような堕落を歩んでいくのだろうか。男は寂しさを覚えずにはいられなかった。


 別れ際に女が言った。


「貴方がドイツにいた頃のブログも、全部読んでたんだからね。ドイツ人の三姉妹に囲まれて、私がいなくてもずいぶん楽しそうにしてたね」


「分かってないな」


 その時、全ては記憶から思い出に変わった。

 

 

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  • 2015.10.23 Friday
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コメント
おぉ、不毛。といった僕の発言はそれほど的はずれでもなかったと、そう解釈してもいいのかしらん。

なかなか切ない体験しましたな。まあそのおかげで久しぶりに僕のすきな温度の文章でした。

相手に自分の過去を投影してしまうとなんだか陳腐に思えてしまう節が僕にもあります。決して同じじゃないんだけどね。
  • 求職中
  • 2008/02/19 5:13 AM
求職中さん>
あの会合は、不毛どころか、極太の悔恨を脳に直接埋め込むに至りました。彼女は遅咲きという言葉が今日本でもっとも似合う女性です。こちらはてっきり、デフォルトの時点でそういう女性を超越した存在だと思っていたのですが、その実「私もマンガみたいな恋したい」という案配でした。
結句、ディズニーにも行きたいし、甘い物には目がないし、彼氏にはお洒落であってほしいし、毛根はあったほうがいいと。そこに文句は言えない。こちらもまた、彼女にはお洒落であってほしかったし、可愛くあってほしかったわけで、そのあたりは無自覚的にこなしていた彼女にとり、ワタシの日常というのは、あまりに堕落、沈降していたようで、ございます。

しかし、そんなことはとっくに理解してくれていると、思っていたのである。

人並みの情報摂取運動、人並みの休日歓楽運動、全てがおかしく、晩年においては、貴方のまわりには変な人しかいないと、そういう言い草からして、ははぁ、こいつ、モテ始めたな、そう思ったものです。そしてそれは当たりました。彼女は今や、フツーに結構可愛い女性として君臨し、たまにブラウン管への登場もあり、そうして今やこのジャガタコは完全に過去へと忘却されているのでした。小川のゆるゆるとした流れに引きずられ足を止めている場合ではないのだが、こうなるならもっと陵辱しておけば良かったなど、後悔がリアルタイムで展開されています。

さて、これだけ話したのですから、酒とピンサロくらいは奢ってもらわないと。ふぅ。
  • 本人
  • 2008/02/19 8:22 PM
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