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  • 2015.10.23 Friday
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最終戦争論・戦争史大観

 昨日、夜もとばり、フランス人女性がこんなことを仰った。


「日本はヘンですね、国家のなんちゃらとか、日本人のなんちゃらとか、そんな本ばかりが売ってありますね、そんなに民族とかを強調している国はちょっと珍しいですね」


 たしかにここ数年というもの、殊に日本かくあるべし、を強調する書物が増えている。正しく言えば、メディアの寵愛を受けているせいで注目されやすい傾向が目立っている。ところで己の優越性を誇示するには二つのやり方があって、一つは斯様な自画自賛の演出、もう一つは、他者を貶めることによる己の価値の相対的上昇である。好例として、鯨を喰らう日本人を罵倒しては自らの崇高な精神を愛でる諸外国のやり口などが挙げられる。


 ファミコン世代としては鯨食になじみも薄ければ、それを指して日本人特有のアイデンティティであると諸外国に叫ぶことの意義も理解しないのだが、これもグローバリズムの害悪かと思うと、反骨心ひとひら握りしめ、立ち向かいたくなる気持ち、分からないでもない。しかしそうやって伝統云々を引き合いにピュアなマイノリティの権利を主張するのなら、アイヌ民族に対して加害者となっているマジョリティとしての自己など、鯨よりも考えねばならぬことがあるはずである。アイヌ民族は、同じ人間ですから。大なる矛盾あるうち、説得力は乏しい。それよりむしろ、日本の文化だからという前置きを外してしまって、肉は食肉、鯨油は燃料、腱は繊維、良質な海洋資源なんですと宣言したほうが、エコの時流に沿っている。みんな大好きじゃないですか、エコ。イルカやクジラがエコと近しいイメージに置かれているのは、謎である。


 ところで、アイデンティティを殊更に強調する本が溢れているという話。そこで、石原莞爾を調べてみたわけである。関東軍作戦参謀、本来のルビは「いしわらかんじ」だが、アップル社は米帝発なので、よく誤解されがちな「いしはらかんじ」でないと、正しい漢字が表記されないようだ。こうして日本国民は偽史を植え付けられるわけだが。


 彼の著作「最終戦争論・戦争史大観」は、青空文庫で目下ダウンロード配信中である。太平洋戦争に突入した原因を「軍部の暴走」ただこの一言で片付ける現代にあって、その暴走がいかほどのものであったか、教えてくれる人は少ないし、戦争に言及する数多の賢人たちにあっては、戦後左翼主義の洗礼を浴びた人間が多く、フェアではない。原文ママで、自ら確認することが肝要であろう。そう思い立つや、会社のA3用紙33枚を頂戴し、印刷、紙面に水性ペンさらさら滑らせページ番号記入、ホチキスで止めた。以下、興味深い箇所を引用。


「…この次の、すごい決戦戦争で、人類はもうとても戦争をやることはできないということになる…世界の一地方を根拠とする武力が、全世界の至るところに対し迅速にその威力を発揮し、抵抗するものを屈服し得るようになれば、世界は自然に統一することとなります」


「今日のように陸海空などが存在しているあいだは、最後の決戦戦争にはならないのです。それ動員だ、輸送だなどと間ぬるいことではダメであります…一番遠い太平洋を挟んで空軍による決戦の行われる時が、人類最後の一大決勝戦の時であります…破壊の兵器も今度の欧州大戦で使っているようなものでは、まだ問題になりません。もっと徹底的な、一発あたると何万人もがペチャンコにやられるところの、私どもには想像もされないような大威力のものができねばなりません」


 恣意的に抜き出せば、ご覧の通り、石原莞爾は大予言者である。武力によって世界を手中のところとするアメリカと、一撃多殺の原子爆弾とをずいぶん早い段階で予期している。白眉である。更に、最終戦争を行い得る4つの勢力を分析する(そして、日米がその行い手であるだろう、という考えを表明するに至る)。


ソ連「ソ連は非常に勉強して、自由主義から統制主義に飛躍する時代に、率先して幾多の犠牲を払い幾百万の血を流して、今でも国民に驚くべき大犠牲を強制しつつ、スターリンは全力を尽くしておりますけれども、どうもこれは瀬戸物のようではないか。堅いけれども落とすと割れそうだ。スターリンに、もしものことがあるならば、内部から崩壊してしまうのではなかろうか。非常にお気の毒ではありますけれども」


ヨーロッパ「ヨーロッパの組はドイツ、イギリス、フランスなど、みな相当のものです。とにかく偉い民族の集まりです。しかし偉くても場所が悪い。確かに偉いけれどもそれが隣り合わせている。いくら運命協同体を作ろう、自由主義連合体を作ろうと言ったところで、考えはよろしいが、どうも喧嘩はヨーロッパが本家本元であります。その本能が何と言っても承知しない。なぐり合いを始める…ヒットラー統率の下に有史以来未曾有の大活躍をしている友邦ドイツに対しては、誠に失礼な言い方と思いますが、何となくこのように考えられます」


東亜「ぐうたらのような東亜のわれわれ」


米州(アメリカ)「成金のようでキザだけれども若々しい米州」


 ついでにこんな一文も。


「日本の(これまでの)戦争は主として国内の戦争であり、民族戦争の如き深刻さを欠いていた。殊に平和的な民族性が大きな作用をして、敵の食糧難に同情して塩を贈った武将の心事となり、更に戦の間に和歌のやりとりをしたり、あるいは那須の与一の扇の的となった。こうなると戦やらスポーツやら見境いがつかないくらいである。武器がすばらしい芸術品となったことなどにも日本武力の特質が現われている」


 というわけで、いや、俊英と呼ばれただけあって、粋な文章を書く。最終戦争論などと銘打ってあるものだから、仰々しい檄文めいたものかと思ったらば意外、エッセイよろしくといった文体で、様々が語られていた。もちろん内容は太平洋戦争へと大衆をいざなうもので、八紘一宇の云々に始まり、戦争には老若男女、山川草木、豚や鶏までが参加することになる、など、予言書にしては微細に穿っているものだから恐ろしい限りである。実際その通りになったわけですし。


 しかし、軍部の恐ろしい心情を表明するにしては足取り軽やかでございます。戦争に遠足の気分を抱いた児童の気持ち、分からないでもない。勉学に秀でて主席ながら、冬でも半袖など服装の汚いことを理由に次席させられるなど破天荒な様子からして、この人は平和な時代に生まれていたらば軍部で辣腕を発揮した才能をきっと他にもまわすことが出来ただろう。この類いの文書は「我が闘争」や「二十世紀の神話」をはじめ、退屈比類ないのが常である。発狂に至った海軍秋山然り、あの時代の軍人には並の才能を外れた人間が沢山いたのだが、みんな死んだ。


 プロパガンダには、注意しよう。

 


 

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  • 2015.10.23 Friday
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  • 01:40
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コメント
石原莞爾は天才ですね。世界最終戦論読んだ大学生当時はびびりました。預言者です。写真をみても凛々しい。切れ者顔。

捕鯨に抗議してくるオーストラリア人がカンガルーを食べていることに抗議したいですね。僕は。
ペリーが浦賀に寄ったのも捕鯨のための給油ですから。白人は信用できません。

信用できるのは南明奈のおっぱいだけですね。
  • もりもり
  • 2008/01/31 1:29 AM
 国柱会は明治大正昭和の時代を活躍した仏教の改革者、田中智学先生が明治17年に創立した純正日蓮主義の在家仏教組織であり、文部省認証の包括宗教法人です。



 とまれ。石原莞爾の文章は柔らかく機知があり、諧謔すらして平成の私たちが読んでも至極お勉強になりますね。いい具合に狂っているし。


 猫木は無頓着で腐海をクルグル廻る―――
 斯くの如く強くなった暁には本門戒壇が建って、世界は一統にすべられているでしょう。しかし我々はどん底でいて、酒でもやっておればいいのです。妖怪には、預り知らぬことですから。


森々さん>
捕鯨はグリーンピースをはじめとする環境保護団体にかなり恣意的に利用されていますね。なんでも、外国でクジラを名目に募金をすると集金率がすさまじいのだといいます。かつては捕鯨を是としていたにもかかわらず、やれ聖書に神聖な動物と書かれているからとか、もはや教会にも行かない若者すらもがそうした半端な理由を盾に思想転換をした経緯には、ちょっと勉強する価値ありかと思います。
石原莞爾はあっぱれな男です。僕は、アッキーナならば、おっぱいと言わずヒップその他諸々をも、妄信出来るのだが。
  • 本人
  • 2008/01/31 9:44 PM
拝啓 山本ローサ>

太平洋戦争と日蓮の教えを統合した石原莞爾、まさしくカルト、しかし、それでいい。一億総カルト、今の世に足りないのは夢です。大きすぎる夢はカルトです。木村カエラとセックスがしたい、オダギリジョーならいざ知らず、僕にとりそれはカルトです。しかも僕は、20歳の頃のカエラとセックスがしたいんです。それをカルトと言わずして何と言いましょう。

「ロリコン」

違います。




  • 本人
  • 2008/01/31 9:55 PM
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